Cut
カットとシェイプを混同されている方が多いようですが、カットはダイヤモンドの全体的な形のバランスと研磨の仕上げの状態を表しています。
カラー、カラット、クラリティは自然が決定しますが、ダイヤモンドに輝きという永遠の生命を吹き込むのは熟練したカット職人の技。
最新の技術と経験に裏付けられた職人技によってバランスよくカットされたダイヤモンドは、光をよく取り込み、きらめきを増幅させ、限りなく価値を高めます。
原石の研磨は、まさにミケランジェロやロダンの傑作にたとえられるような芸術であり、ダイヤモンドの輝きは、生命、愛、情熱を象徴するものです。
近年はダイヤモンドカット技術の進歩により、「エクセレントの中でも最高」と言われ業者間で好まれていた3Excellent H&C(トリプルエクセレントハートアンドキューピッド)のダイヤモンドが、一般の消費者様でも普通に選択できるようになっています。
1つは効果的な光の戻り(ライトリターン、ブリリアンス、ディスパージョン)
もう1つは高い歩留り(ウエイトリカバリー)です。
ラウンドブリリアントカット:58面体(キューレットを除く場合57面体)
カラー:DからZカラーまで
クラリティ:フローレスからI3
カラット:自動測定機で計測可能な大きさ(目安としては約0.1ct以上)
カットグレードはプロポーション要素(プロポーションの各寸法については自動測定機ダイア メンションを使用)をGIA Facetware Cut Estimatorデータベース(3850万通り以上)で照合し、目視評価要素を経てExcellent(エクセレント)・VeryGood(ベリーグッド)・Good(グッド)・Fair(フェア)・Poor(プア)の各グレードに決定されます。
ダイヤモンドのプロポーション要素 - 出典 GIA「ダイヤモンドのカット」より
テーブルサイズ(Table Size) | |
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グレード範囲 | 数値範囲 |
Excellent to Poor | 52% to 62% |
Very Good to Poor | 50% to 66% |
Good to Poor | 47% to 69% |
Fair to Poor | 44% to 72% |
Poor | ~44% to 72%~ |
全体の深さ(Total Depth) | |
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グレード範囲 | 数値範囲 |
Excellent to Poor | 57.5% to 63.0% |
Very Good to Poor | 56.0% to 64.5% |
Good to Poor | 53.0% to 66.5% |
Fair to Poor | 51.9% to 70.9% |
Poor | ~51.9% to 70.9%~ |
クラウン角度(Crown Angle) | |
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グレード範囲 | 数値範囲 |
Excellent to Poor | 31.5º to 36.5º |
Very Good to Poor | 26.5º to 38.5º |
Good to Poor | 22.0º to 40.0º |
Fair to Poor | 20.0º to 41.5º |
Poor | ~20.0º to 41.5º~ |
クラウン高さ(Crown Height) | |
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グレード範囲 | 数値範囲 |
Excellent to Poor | 12.5% to 17.0% |
Very Good to Poor | 10.5% to 18.0% |
Good to Poor | 9.0% to 19.5% |
Fair to Poor | 7.0% to 21.0% |
Poor | ~7.0% to 21.0%~ |
パビリオン角度(Pavilion Angle) | |
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グレード範囲 | 数値範囲 |
Excellent to Poor | 40.6º to 41.8º |
Very Good to Poor | 39.8º to 42.4º |
Good to Poor | 38.8º to 43.0º |
Fair to Poor | 37.4º to 44.0º |
Poor | ~37.4º to 44.0º~ |
スター長さ(Star Facet Length) | |
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グレード範囲 | 数値範囲 |
Excellent to Poor | 45% to 65% |
Very Good to Poor | 40% to 70% |
Good to Poor | any value |
Fair to Poor | any value |
Poor | any value |
ローワーハーフ長さ(Lower Half Facet Length) | |
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グレード範囲 | 数値範囲 |
Excellent to Poor | 70% to 85% |
Very Good to Poor | 65% to 90% |
Good to Poor | any value |
Fair to Poor | any value |
Poor | any value |
ガードル厚(Girdle Thickness) | |
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グレード範囲 | 数値範囲 |
Excellent to Poor | 2.5% to 4.5% |
Very Good to Poor | up to 5.5% |
Good to Poor | up to 7.5% |
Fair to Poor | up to 10.5% |
Poor | any value |
ガードル厚(谷部の最小 最大)(Girdle Thickness Verbal Description) | |
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グレード範囲 | ガードル厚範囲 |
Excellent to Poor | Thin(薄い) to Slightly Thick(やや厚い) |
Very Good to Poor | Extremely Thin(極めて薄い) to Thick(厚い) |
Good to Poor | Extremely Thin(極めて薄い) to Very Thick(非常に厚い) |
Fair to Poor | Extremely Thin(極めて薄い) to Extremely Thick(極めて厚い) |
Poor | Extremely Thin(極めて薄い) to Extremely Thick(極めて厚い) |
各ガードル厚の違い
キューレットサイズ(Culet Size) | |
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グレード範囲 | キューレットサイズ範囲 |
Excellent to Poor | none(無し) to small(小さい) |
Very Good to Poor | none(無し) to medium(普通) |
Good to Poor | none(無し) to large(大きい) |
Fair to Poor | none(無し) to very large(非常に大きい) |
Poor | none(無し) to extremely large(極めて大きい) |
ポリッシュ(Polish) | |
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グレード範囲 | 研磨状態 |
Excellent to Poor | Excellent |
Excellent to Poor | Very Good |
Very Good to Poor | Good |
Good to Poor | Fair |
Poor | Poor |
ポリッシュの違いによる光の反射の違い
シンメトリー(Symmetry) | |
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グレード範囲 | 対称性 |
Excellent to Poor | Excellent |
Excellent to Poor | Very Good |
Very Good to Poor | Good |
Good to Poor | Fair |
Poor | Poor |
シンメトリー評価要素例
1. 浅すぎるカット:下部から光が漏れている。
2. 深すぎるカット:側面から光が漏れている。
3. 完全なカット:上部での光や輝きが多い。
正確にカットされたダイヤモンドは、効果的な光の戻り(ライトリターン、ブリリアンス、ディスパージョン)を示します。
ダイヤモンドから放たれる美しい光輝がダイヤモンドの最大の魅力です。
その比類なき美しさはダイヤモンドが天然鉱物の中で特に優れた硬度と屈折率、分散率をもつことに由来します。
これらの特性を活かし原石を研磨(カット)することによって得られるブリリアンシー、ディスパージョン、シンチレーションと呼ばれる光の効果と純粋な透明度が相乗作用してダイヤモンドは永遠に美しく輝くのです。
表面および内部反射によって目に戻ってくる全ての光の総体を意味する。
カットが良くなるほど石は明るくなります。
内部反射に関しては、石がどのようにカットされているかに大きくかかっている。
白色光の拡散と、その構成要素であるスペクトル色相への分離。
スポットライトの下で石を動かす事で、赤や青、黄色、オレンジ色のきらめきを探す事が出来る。
ダイヤモンド自体のディスパージョンは高いが、ディスパージョンがその本領をどの程度効果的に発揮できるかは、カットによって決まる。
石、光源または観察者が動く時に見られる光のきらめき。
カットが良くなるほど反射は均等になり、明暗のコントラストが鮮やかになります。
<関連リンク>:ダイヤモンドのファイアやシンチレーションを可視化したウィスパーオブダイヤモンド
3Excellent H&C(拡大) | VeryGood(拡大) |
上の図はカットグレード3Excellent H&C(トリプルエクセレントハートアンドキューピッド)とVeryGood(ベリーグッド)のダイヤモンドを目視し易い様に表面反射を抑えて撮影した鑑定書に添付される写真です。
3Excellent H&C(トリプルエクセレントハートアンドキューピッド)は私たちに芸術的ともいえる正確なプロポーションとフィニッシュを見せてくれます。
矢が放射状に均一に延びたパビリオンメインファセット(キューピッドの矢)と、中心に見えるパビリオンに映ったスターファセットの8つのボウタイ(GIA用語、蝶ネクタイの模様)が正確に八角形を描いているのが特徴的です。
ノーマルExcellent(エクセレント)ではこれらの部分に数パーセントのズレが生じ、特に中心付近が大きくズレ初めます。
しかし、VeryGood(ベリーグッド)になると、各ファセットにはサイズ、角度とも大きなズレが生じ、シンメトリー(対象性)が大幅に損なわれてしまいます。
正確にカットされたダイヤモンドは、表面反射を抑えても内面反射により明るく写っているのが判ります。
左からエクセレント・グッド・プア - 出典 GIA「トリプルXダイヤモンド」より
GIAカットグレーディングシステムではExcellentが最高となりますが、その中でも以下の要因によりクラス分けが存在致します。
カット評価がエクセレントで、ポリッシュ(研磨状態)とシンメトリー(対称性)のいずれか、もしくは両方がベリーグッド評価のもの。
相場価格は3Excellent H&Cと比べて15~20%程度安くなります。
カット評価がエクセレントで、ポリッシュ(研磨状態)とシンメトリー(対称性)の両方がエクセレント評価のもの。
相場価格は3Excellent H&Cと比べて15%程度安くなります。
カット評価がエクセレントで、ポリッシュ(研磨状態)とシンメトリー(対称性)のいずれか、もしくは両方がベリーグッド評価のもので、且つハートアンドキューピッドの現象が認められるもの。
相場価格は3Excellent H&Cと比べて10%程度安くなります。
カット評価がエクセレントで、ポリッシュ(研磨状態)とシンメトリー(対称性)の両方がエクセレント評価のもので、且つハートアンドキューピッドの現象が認められるもの。
GIA鑑定書記載例(左) / CGL鑑定書記載例(右)
カットグレード(等級)はプロポーションと目視要素の総合評価で決まりますが、それと併記される仕上げ(フィニッシュ)項目に、ポリッシュ(研磨状態)とシンメトリー(対称性)があります。
3Excellent(トリプルエクセレント)は、その3つが全てエクセレント評価の、非常に正確性の高いダイヤモンドです。※海外ではトリプルXとも呼ばれています。
ノーマルExcellentやExcellent H&Cでは、ポリッシュとシンメトリーのどちらかか、双方がVeryGood評価となります。
ただ、3Excellent(トリプルエクセレント)はフィニッシュが正確である事の指標となりますが、4C評価レベルの厳密な判別基準ではないため、後述するカットの正確なダイヤモンドに見られるH&C(ハートアンドキューピッド)の現象が出ないものも多数存在します。
この場合、部分的にファセット角度がズレていたり、そもそもシンメトリー評価がかなり甘い可能性があるため、3Excellent(トリプルエクセレント)ご購入の場合、H&C(ハートアンドキューピッド)認定されているものをご選択いただく方が、厳密なカットの正確性という意味では懸命と言えます。
国内相場では、3Excellent H&C > Excellent H&C > 3Excellent >= ノーマルExcellent の順で相場価格が変わります。
<関連リンク>:GIAのエクセレントは、全てトリプルエクセレントなのでしょうか?
上の写真はダイヤモンドをクラウン側から、右の写真はパビリオン側から特別な条件で撮影したものです。
このように最高のシンメトリー(対称性)が奏でる綺麗で正確な8つのアロー(矢模様)とハート像がくっきりと観察される現象をハートアンドキューピッドと称し、CGLやAGTのダイヤモンドグレーディングレポート(鑑定書)にサブレポートが付属します。
反射した各ファセットの像は、かなりの精度(角度・面積・形状等)で研磨されていないと綺麗に反射せず、美しいパターンの形成にはなりません。
それぞれの形状や位置関係には基準を設け、トリプルエクセレントクラスで同じ現象に見えるものでも、ハートやキューピッドの矢模様が薄かったり少しのズレ等が原因でH&C(ハートアンドキューピッド)と認定されないものが沢山あります。
特に国内鑑定機関であるCGLやAGTが認定するH&Cは厳密で、海外でHeart&Arrow(H&C)認定されたものでも、特に対称性が甘いという理由で認定されないものが多々あります。
H&C認定3Excellentの写真例
H&C非認定3Excellentの写真例
下の写真はGIAで鑑定された3Excellentで、CGLに提出されH&C認定が下りなかったダイヤモンドの写真です。
事前確認で諦める場合の多いH&C認定に提出された時点で、かなり整った部類の3Excellentと言えますが、それでもハート境界線のズレ、矢先と矢軸の接合ズレ等が容易に確認出来てしまいます。
正式な基準のH&C(ハートアンドキューピッド)は、1ピースが0.1ct未満のダイヤモンドルースには交付されません。
<中央宝石研究所H&C判定基準>:中央宝石研究所:ハート&キューピッド
エクセレントカットの人気を不動のものにしたハートアンドキューピッドは、マルセルトルコフスキーのラウンドブリリアントカット理論完成から74年後の1993年に、世界最高峰のダイヤモンドカッターであるANTWERP BRILLIANTのフィリッペンスベルト氏とトップチームがアントワープで研磨に成功し、ダイヤモンド研磨業界に新しい常識を作り出しました。
<こだわるなら必須>:世界最高峰のダイヤモンドカッターの手によって生み出されたダイヤモンド界のスタンダードカット
GIAではH&C(ハートアンドキューピッド)の検査・認定業務を行っていないため、H&Cの認定を受けるには国内鑑定機関であるCGLやAGTでのダブル鑑定が必要になります。
3Excellent H&C表記でもCGLやAGTの証明(ソーティング等)が付属しないものは、正式なH&Cとして市場では扱われておりません。
正式にH&C認定されていない3Excellentの国内相場価格は、15パーセント程度価格が下落しますので注意が必要です。
<関連リンク>:GIAのトリプルエクセレントは、全てハートアンドキューピッドなのでしょうか?
テーブル(table):1 |
スター(star):8 |
ベゼル(bezel):8 |
アッパーハーフ(upper half):16 |
パビリオンメイン(pavilion main):8 |
ローワーハーフ(lower half):16 |
キューレット(culet):1 |
原石からの歩留まりが価格に大きな影響を与えるダイヤモンドカッティングの世界では、「ソーヤブル*」と言われる最高の歩留まりがある代わりに最も高価である原石が理想的とされています。
ソーヤブルとはソー(のこぎり)イングに適していると言う意味で、この場合2つのダイヤモンドに分けられることを意味します。(そのため歩留まりが高く高価になります)
宝石品質ダイヤモンドの原石はソーヤブル(全体の2割弱で正八面体もしくは限りなくそれに近い形状でラウンドブリリアントカットに最も適しています)、メイカブル(長い、平べったい等形状がまちまちで、主にファンシーシェイプダイヤモンドに研磨される)、ニアージェム(かろうじて宝石用となるもの~工業用)に分けられます。